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はじめに

 食の安全や環境保全などに対する国民の関心が高い中、有機農産物に対する消費者ニーズは増加基調にあります。しかし、国内での有機農産物の生産量は十分ではなく、海外からの輸入に頼っているのが現状です。一方、有機農業に取り組んでいるあるいは取り組みたいとする生産者は多く、特に若い層が有機農業に高い関心を持っています。
 農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)や公立の試験研究機関などでは、「有機農業をやってみたい」という生産者に対して、科学的なデータに基づく有機栽培技術や体系を提案するため、試験圃場や農家圃場で試験・研究を行っています。これらの研究結果や成果は、できるだけ早く他の研究機関の研究者、指導者および生産者などに情報提供し、皆様に研究、実践していただきながら、さらなる改良・改善を行っていくこととしています。
 本書は、農研機構をはじめ福島県、島根県、新潟県、岐阜県の試験研究機関、みのる産業株式会社および東京農工大学が連携して、「水稲の有機栽培技術」を生産者向けのマニュアルとしてとりまとめたものです。特に、水稲の有機栽培で問題となる雑草対策については、高精度水田用除草機、チェーン除草機、水田用除草ロボット(アイガモロボット:開発中)、高能率ミッドマウント型水田用除草機を中心に、データに基づき抑草効果や使用条件等を解説しています。また、各除草機の操作方法は、「Ⅱ.除草機械操作・活用編」に詳しく解説しています。さらに、「Ⅲ.現地情報・実証試験編」では、前記の除草機械等を利用して行った有機栽培の現地試験の情報を記載しています。本書は、除草作業を含め圃場選びや育苗から収穫後の圃場管理まで記述していますので、これを実践することで、生産者の方々が比較的容易に有機栽培に取り組み、一定の収量をあげられると考えています。しかし、有機栽培のやり方は、有機栽培を行う地域の気象条件や圃場の土壌条件、栽培継続年数などによって変化するため、汎用的な100点満点の栽培技術にはなかなかなり得ません。生産者の方々には、本書を参考に、一層の創意工夫により高度で安定的な有機栽培を目指していただきたいと存じます。
 本書に関してわかりにくい点、疑問点あるいは本書に記載していない技術で有機栽培に有効なもの等ございましたら、ご連絡(できればデータを付して)いただければ幸いです。今後とも、皆様からのご意見や新しい試験結果等をもとに、本書を加筆、修正していく所存です。

平成28年2月
        農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター 三浦重典(編集代表者)

page2.txt · 最終更新: 2016/02/29 (Mon) 16:23 by juten