高精度水田用除草機を利用した有機栽培体系の現地実証事例(A)
<実証試験地> 島根県浜田市有限会社A
<試験年次> 2014年~
<ほ場面積> 18.8a
<導入した除草機械> 高精度水田用除草機(クボタSJ-6N)、回転ブラシ*1(島根県農技センター開発)
本試験を実施している法人における2015年の水稲作付面積は15.0haであり、7年前から水田用除草機(多目的田植機)を利用して除草剤ゼロ米の生産に取り組んできており、2012年からは‘きぬむすめ’の農薬・化学肥料不使用栽培にも取り組んでいます。2015年の農薬・化学肥料不使用米の作付面積は31aでしたが、水田用除草機を利用している278aについては従来の除草剤ゼロ米から農薬不使用米に切り替えています。本試験の実証ほにおいては米ぬかを10aあたり100kg散布し、早期湛水を実施するとともに、水田用除草機を2回稼働させています。
品種は島根県の奨励品種‘きぬむすめ’を用いました。育苗はJAの育苗センターで行っており、無消毒種子を温湯消毒(60℃で8分30秒)した後、乾籾80g/箱を播種しました。育苗培土は有機グリーンソイルを用い、育苗期間中に鰹ソリューブル500倍液を2回施用しました。
本田は4月初めから湛水し、4月4日に1回目の代かき、以降湛水状態を維持し、5月20日に2回目の代かきを行いました。2回目の代かきは浅水状態で丁寧に練り込んで除草効果を高めるようにしました。5月23日に田植えを行い、5月31日(田植え後8日)に1回目の機械除草(図A-1)、6月10日(田植え後18日)に2回目(図A-2)を実施しました。機械除草は2回とも除草機に回転ブラシを装着して行いました。機械除草時にはほ場の中で比較的高い地点も深水になるよう水管理を徹底し、除草効果を一層高めるよう配慮しました。その結果、試験ほ場における雑草発生は少なく、手取り除草の必要性はありませんでした(表A-3)。除草機による苗へのダメージは小さく、欠株率は2.5%と低いレベルでした。
土づくり対策として前年秋に稲わらを全量すき込むとともに牛ふん堆肥を500㎏/10a施用、また、2月中旬に米ぬか(粉末状)を100㎏/10a施用しました。肥料は有機アグレット666*2(N -P2O5-K2O=6-6-6%)を使用、基肥を2回目の代かき時に50kg/10a、追肥を7月14日に45㎏/10a表層施用しました。
水稲の生育は初期から非常に旺盛で茎数が多く(図A-4)、8月中旬以降の長雨や台風による倒伏も若干みられたものの、収量への影響は少なく、10a当たり収量(坪刈り)は584kgとなりました(表A-5、表A-6)。
10a当たり労働時間は42.2時間であり、作業別にみると畦畔除草が24.0時間で最も多く、次いで基肥4.1時間、代かき3.2時間、収穫2.9時間、水管理2.6時間などの順に多くかかっていますが、試験ほ場での本田除草は1.2時間のみでした。
試験ほ場の10a当たり生産費は115,201円であり、費目別にみると労働費が44,280円で最も高く、次いで種苗費18,260円、農機具費16,133円、肥料費14,841円、賃料料金13,074円などの順に多くかかっています。10a当たり収量(実収)は527kgであり、60kg当たり生産費は13,118円でした(表A-7)。
精玄米1kg当たり平均販売単価は221円であり、10a当たり粗収益は116,628円と見込まれ、10a当たり経営費70,921円を差し引いた10a当たり所得は45,707円でした。また、10a当たり所得と労働時間をもとに算出した総労働1日当たり所得は8,665円でした。
2015年の実証ほにおける残草量は極めて少なく、生産者からは機械除草技術に対して高い評価が得られています。生産者としては①機械除草に入る時期(田植え後7日頃とその10日後)②機械除草時の水深を確保すること、の2点を守れば高い効果が得られるということを実感しているようです。
生産者は、①雑草発生量が多い地点で除草機の回転数だけ上げることが出来ればよいと思うが、現状では本体の走行速度と連動しているため出来ない、②回転ブラシを連年使用していると3年目ころから、ブラシの摩耗のせいか、若干除草効果が落ちてくるような気がする、③除草機が最後部にあるため、除草できているかどうか、作業しながら確認することが難しいといった点を問題点として挙げています。
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