高精度水田用除草機は、2001年に農研機構と民間企業との共同研究によって開発された機械で、乗用型多目的田植機の機体後部にPTOを介して接続可能な除草装置です(図5B-1)。本装置には、高速回転する横軸回転ロータで水稲の条間を除草し、水平左右に揺動するレーキで株間を除草する方式の除草機構(図5B-2)が採用されています。現在、乗用型多目的田植機および除草装置は、6条用と8条用が井関農機株式会社、株式会社クボタ、ヤンマー株式会社の3社より販売されています。除草時の作業速度は0.3~0.5 m/s(移植時のスピードの1/2~1/3)が標準的です。10アール当たりの作業時間は6条用が約30分、8条用が約20分で、省力的に除草作業ができることが特徴です。
高精度水田用除草機は多目的田植機とセットで購入する必要があり、経営面から有機栽培面積がおおむね3 ha以上規模の農家への導入が推奨されます。特に、以下のような条件の圃場を選択してください。
高能率水田用除草機は、2014年に農研機構とみのる産業株式会社などが共同で開発した3輪タイプの乗用型除草専用機で、現在は4条用、6条用及び8条用が市販されています(図5B-9)。本機は、3輪型乗用管理機の車体中央に除草部が搭載され、ベース車両からのPTOにより駆動します。車体の中央に除草部があることから、オペレーターが除草部や稲株を目視で確認しながら作業することが可能なため、高精度な除草作業が可能です。除草部は条間が駆動ロータ式、株間が揺動ツース(レーキ)式で(図5B-10)、揺動ツースは揺動速度を2段階に調整することができます。また、除草部の高さも細かな設定が可能です(除草機械操作・活用編>12.高能率水田用除草機>(2)を参照。作業速度は最大1.2m/s(歩行型の約4倍)です。オプションで車体後部にチェーン除草機(図5B-11)や米ぬか散布機(図5B-12)を取り付けることが可能です。本機を利用した除草作業と、深水管理やチェーン除草などを併用することによりさらに高い除草効果が得られます。
大規模から小規模までの農家への導入が可能です。導入する圃場の条件としては、基本的に高精度水田用除草機の導入条件に適合している圃場には本機が導入可能です。以下に高精度水田用除草機との違いも含め、推奨圃場条件をご紹介します。
除草作業を行う際の圃場条件などは基本的に高精度水田用除草機と同様ですが、苗の活着状況や圃場条件に合わせた作業速度で作業することが必要となります。除草作業時の本機の詳細な設定などについては、(除草機械操作・活用編>12.高能率水田用除草機>を参照してください。
チェーン除草機の除草能力に過剰な期待はできませんが、多くの場合雑草残草量は半減します(図5B-20)。また、移植後の早い時期の除草回数を増やすことによって除草効果を高めることができます。ただし、化学合成除草剤のように雑草根絶を目指す技術ではなくあくまでも雑草低減技術であるため、成苗移植技術や雑草共存環境を前提とした施肥管理技術と組み合わせることが重要です。
圃場条件に合わせて、ヒル釘の取り付け角度、貫入深度、牽引ロープの取り付け位置や長さ、重りなどを加減し、除草作業時にヒル釘の頭が均一に土壌表面に接触すると共に、夾雑物の絡まりが最少になるように調整します 。
アイガモロボットは、水田内の稲列をまたぎクローラで走行して、雑草の発生を抑制するロボットです。内蔵のカメラで稲列を検知して、稲を踏まないように条間を自動走行します。
最新の試作機(平成27年度仕様)は、総重量が約13kgで1回の充電で約5時間の走行(作業)ができる仕様となっています。
***** 水田用除草ロボットは現在開発中です *****
これまで紹介した高精度水田用除草機、高能率水田用除草機、チェーン除草機、アイガモロボット以外の除草機械の概要、特徴等を紹介します。
1)乗用型水田用除草機
除草装置を乗用型の車両に取付けて除草作業を行う水田用除草機が、数社から市販されています。乗用型のため比較的経営規模が大きい生産者の有機栽培に適します。主な特徴および注意点は下記の通りです。
2)歩行型水田用 (中耕) 除草機
多くの企業から様々な歩行型水田用除草機が市販されています。歩行型水田用除草機には、主に除草装置を小型エンジンの動力で駆動して除草作業を行うものと、人力で水田内を押して歩くことにより、除草用のロータを回転させて除草作業を行うものがあります。どちらも作業者が水田を歩行する必要がありますので、大規模な有機栽培には適していません。主な特徴および注意点は下記の通りです。
<引用文献>
1)吉田隆延・水上智道・宮原佳彦・牧野英二・臼井善彦・関口孝司・三浦重典 2010. 乗用型水田除草機と米ぬか散布を組み合わせた水田用複合除草技術の実証試験. 平成21年度生研センター研究報告会:23-31
2)宮原佳彦 2005. 乗用型高精度水田用除草機の開発と実用化. 関東雑草研究会報告16: 11-17
3)月森弘 2013. 水稲有機栽培のための新しい株間除草方式の開発とその効果. 農研機構技術研究会資料「有機栽培技術研究の現状と課題」:33-37
4)安達康弘 2010. 水田用除草機を利用した除草法の改良とその効果. 中国・四国雑草研究会会報第4号:5-9
5)古川勇一郎 2011. 「チェーン除草」農業総覧・病害虫防除・資材編. 第9巻追録第17号 機械除草
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