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除草機械操作編

9.高精度水田用除草機

 高精度水田用除草機は、乗用型多目的田植機の機体後部にPTOを介して接続可能な除草装置です。移植時と除草時をあわせて3回程度機械の車輪が同じ位置を走行するので、地耐力が高い圃場で使用することが前提となります。除草作業を効率的に行い、機械の旋回部分を少なくするために、10アール以上で長方形の圃場を選択することを推奨します。その他の導入条件については基本技術編 (p.20) を参照してください。
 なお、本編では、主に株式会社クボタの6条用乗用型多目的田植機および高精度水田用除草機を用いて操作事例を紹介しています。他社の機械を使用する際には、操作部の形状やレバー等の位置などが異なっている場合がありますのでご注意ください。また、多目的田植機を慣行栽培と共用する場合は、必ず機械を十分に洗浄した後に有機栽培圃場で使用してください。

(1)移植時の機械操作

1)基本操作

 ①移植は除草機をとりつける多目的田植機で行います。条数の異なる別の田植機で移植すると、除草作業が困難になり、欠株の増加などにつながるのでやめてください。
 ②田植機の横送り切り替えレバーを苗の大きさにあわせて調整します (中苗では20回)。苗取り量調整レバーを調整し、かきとり幅を通常より多めに設定してください (図9-1)。特に育苗箱にばらまき播種した場合は、通常より2段階以上多めに設定することを推奨します。欠株の状況を見てかきとり幅を調節してください。中苗(ばらまき播種)を株間18cmで移植する場合には、10アール当たり26箱の設定で欠株率は概ね2%以下になります(図9-2)。
 ③可能な限りまっすぐに移植してください。走行速度は通常の移植より遅くすることを推奨します。まっすぐ移植することで、欠株率が減少し除草効果が高まります。畦畔ぎわでの条止めした部分は、条数が変わるため本機で除草を行うことが困難です (歩行式の除草機などが必要になります)。
 ④ラインマーカーを1~2段階広めに設定する (図9-3) などにより、植付条間が30 cmより狭くならないよう注意します。条間が狭いと除草作業により欠株が生じやすくなります。
 ⑤移植後は、速やかに水位を5 cm以上まであげ、土壌面が露出しないようにします。土壌面が見えていると雑草の発生や生育が助長されます。

 

2)米ぬかや菜種油粕などを同時に散布する場合(施肥ホッパー付き仕様が必要)

 米ぬかや菜種油粕などの有機物を移植と同時に散布することで、除草効果が向上する場合が多くみられます。米ぬかや菜種油粕は土壌表面に散布する必要があることから、機械を改良する必要があります (改良は簡易なものですが、メーカーの保証が受けられなくなる場合があるので注意してください)。圃場面積が小さい場合は、畦畔から米ぬかや菜種油粕を散布する方法もあります。
米ぬかや菜種油粕は粒状に加工されたものを使用します (図9-4)。粒状の米ぬかは、無洗米施設から出る副産物で、商品名「米の精」や「粒状米ぬか」としてJAなどで販売されています。
 ①移植爪の横にある側条施肥装置の先端部分をはずします (図9-5)。「肥料詰まりセンサー」が接続されているので注意して作業を行ってください。

   

 ②先端をはずした部分にあるチューブの径にあうように市販のホース(ビニールチューブ)を接続し、米ぬかや菜種油粕が株間に落ちるよう調整します (図9-6)。
 ③施肥ホッパーからの繰り出し量を50~60 kg/10 aに調整し (図9-7)、施肥スイッチ(切り替え機) をONにします。
 ④米ぬか等は通常の肥料と異なり目詰まりしやすいので、移植作業の速度は0.5 m/s(通常の移植作業の1/2のスピード) 以下とします。ターン時などに米ぬか等が目詰まりしていないか確認します。

    

(2)除草時の機械操作

1)基本操作

 ①多目的田植機の移植機部分をとりはずし、高精度水田用除草機を取り付けます。
 ②後輪のタイヤを除草用のゴムタイヤに交換します (図9-8)。暗渠上を走行する等で車体が傾く可能性が懸念される場合は、補助車輪の使用をお勧めします (図9-9)。
 ③除草時の圃場の水深は3~5 cm程度にします。

    

 ④株間調節レバーを最も小さい目盛りにあわせます (図9-10)。
 ⑤移植時と同じ場所を走行できる位置に機械をあわせて、操作レバーにより除草機を降ろします。作業速度は0.3~0.5 m/s 程度 (通常の移植作業の1/2~1/3のスピード) にします。
 ⑥作業の深さは後方のレバーにより調整します (図9-11)。スタート時は短い距離を走行して、条間が確実に除草されているかを確認してください。2回目の除草作業では1回目の除草作業より1段階深さを下げる (深くする) と効果的です。深くしすぎると、除草機についているカバーで土を押しだして欠株が増加するので注意してください。
 ⑦枕地に移植している場合は、急旋回や切り返しは極力避けてください。
 ⑧除草作業後は速やかに深水に戻します。

    

2)米ぬかや菜種油粕などを同時に散布する場合(施肥ホッパー付き仕様が必要)

 ①施肥ホッパー下部にある肥料排出部分にホースを接続し (図9-12)、除草機の後方まで延ばします。ホースは田植機メーカーやホームセンターなどから購入可能です。
 ②米ぬか等が水稲の株間に落ちるようホースの位置を調整し、タイラップやヒモなどで固定します (図9-13)。
 ③ホースやヒモが機械本体のTPOや除草機の回転部分に絡まないかなど、安全に作業ができるかを確認します。
 ④肥料ホッパーからの繰り出し量を50~60kgに調整し、施肥スイッチ (切り替え機) をONにします。ターン時などに米ぬか等が目詰まりしていないか確認します。

    

3)除草機に回転ブラシやチェーンを装着する場合

 高精度水田用除草機に回転ブラシ (図9-14) またはチェーン (図9-15) を装着することで、株間の除草効果を高めることが可能です1)2)。ただし、回転ブラシやチェーンの装着は、除草機の保証対象外になる可能性がありますので、メーカーや販売店に確認するとともに、作業の安全に十分注意してください。
 ①機械除草では浅耕が基本ですが、高精度水田用除草機にチェーンを装着する場合、耕深は10 cm程度を確保します。これは、前年の稲株などの分解が不十分な場合、耕深が浅すぎると表層にたまった稲株等がチェーンに引っかかり、欠株発生の原因になるためです。
 ②移植後に除草目的で米ぬか等の有機物を散布した場合は、チェーンを装着して除草を行うと、水稲の生育が停滞したり枯死することがあるので、装着しないでください。

  

<引用文献>
1)月森弘 2013. 水稲有機栽培のための新しい株間除草方式の開発とその効果. 農研機構技術研究会資料「有機栽培技術研究の現状と課題」:33-37
2)安達康弘 2010. 水田用除草機を利用した除草法の改良とその効果. 中国・四国雑草研究会会報第4号:5-9

10.チェーン除草機

(1)チェーン除草作業のコツと注意点

 チェーン除草技術は化学合成除草剤のように雑草根絶を目指す技術ではなく、あくまでも雑草低減技術であることを理解する必要があります。諸条件によって雑草低減率は増減しますが、雑草量の半減が本技術の一つの目安になります。従って化学合成除草剤に依存した栽培体系のように雑草皆無の状況を前提とした栽培管理では残存した雑草による影響を大きく受けてしまうため、残存する雑草との共存を前提とした栽培管理を考えなければなりません。具体的には雑草よりも優先的に稲を生育させるための成苗移植技術や、雑草による養分収奪を考慮した施肥調整技術などです。

1)成苗育苗技術

 成苗移植技術の狙いは雑草との競争力向上にあります。代かき後に発芽してくる雑草と対峙する移植苗は身形が大きいほど有利といえます。例え話しですが、隣町のガキ大将とケンカするならば低学年の子よりも高学年の子の方が圧倒的に有利、そんな感覚です。つまり雑草との競争力という点においては、稚苗よりも中苗、中苗よりも成苗、可能であれば成苗よりもポット苗に利があるといえます。チェーン除草のためには成苗あるいはポット苗でなければならない、というわけではありませんが、できるだけ大きな苗が有利であり、雑草対策は容易になる、といえるでしょう。
 従って、手持ちの播種機と育苗箱で育苗することを前提とすれば、葉齢4.5以上 (不完全葉を除く)・草丈18 cm程度の成苗育苗を心がけることを推奨します。本書のp.6~13や成苗育苗に関する成果情報1)を参照してください。

2)施肥調整技術

 化学合成除草剤に依存した栽培管理では、雑草皆無の状況を想定した施肥設計が基本です。しかし、雑草との共存を前提とした栽培管理では、雑草による養分吸収を考慮した施肥設計にしなければ水稲は養分不足となります。例えば、幼穂形成期頃の雑草残草量が100 g/m2程度の場合 (図10-1、図10-2)、基肥窒素の約4割が雑草に収奪されます (図10-3)。この時、コナギなどの水稲よりも草丈が低く光競合の可能性の少ない雑草が優占している状況であれば、雑草に収奪される養分を考慮して増肥することで、ある程度、水稲の生育量を維持できます2)

3)浮稲発生の可能性の確認

 チェーン除草は、移植した苗の上から作業を行うため(p.24参照)、移植した苗の活着状況が悪いと浮苗を発生させて欠株となります。例えば移植3~6日後の稲株引抜強度と同日行ったチェーン除草による浮苗発生率の調査によると (図10-4)、最低引抜き強度が30gf以下では浮苗が発生しています (表10-5)。現場の判断法としては、稲株を手で引き抜いた時の抵抗感が、単2乾電池 (約50g) をひもで吊した時の抵抗感と同等以下であれば浮苗の懸念があり、単1乾電池 (約100g) をひもで吊した時の抵抗感と同等以上であれば浮苗の心配はないと推定できます。
 浮苗発生が懸念される場合は、チェーン除草の開始を数日先送りすべきですが、その間にも雑草の発芽と生育が進むことを考慮して実施日を決める必要があります。また、一部の黒ボク土壌のように土壌の特性として稲株の引抜き抵抗が高くなりにくい条件では、より軽量なチェーン除草機を導入すべきと考えられます。

4)作業時の注意事項

 チェーン除草機の牽引時にヒル釘が均等に田面に接していないと除草効果が低下するため、ヒル釘の取付位置などについては現場状況に合わせて微調整します。例えば人力牽引を前提とする場合は歩行によって足跡周囲の土壌が盛り上がるため、除草機の中央付近に配置するヒル釘は端に配置するヒル釘よりも5~15 mm程度深くねじ込む (田面とヒル釘の間に隙間を作る) などの調整を行います。
 チェーン除草機の接地圧は除草機に重りを載せることで高めることができます。移植した稲株の確実な活着と雑草の生育に合わせてチェーン除草機の接地圧力を高めることで、より効果的な除草ができます。
 刈株や稲わらなどの夾雑物がチェーンに絡まったまま牽引作業を続けると除草効果が低減するほか欠株の原因ともなるため、チェーンに絡まった夾雑物は適宜取り除きます。アオミドロなどの藻類が発生した場合は、アオミドロがチェーンに絡まるだけでなく稲を押し倒すため、除草作業が困難となります。発生の兆候が見られた場合は作業予定を前倒しして実施すべきですが、既に発生箇所の除草作業は中止せざるを得ません。また、塊茎雑草や発芽深度の深い雑草、生育の進んだ雑草に対する除草効果は期待できません。 耕起や代かきは作土深10 cmを目安とします。作土層が浅いと水稲生育の点では不利といわれていますが、チェーン除草の作業性の点では有利になります。作土層が厚いと牽引負荷が高くなるだけでなく、踏み込みに伴って押し上げられた土壌に稲が押し倒される懸念があります。

(2)チェーン除草機で慣行栽培の90%以上の収量を目標とする栽培体系

1)基肥施用量

 有機栽培に転換後1~2年程度の水田でまだ雑草発生量が多くないと予想される場合は、基肥窒素量を慣行栽培+1 kg程度とします。一方、雑草発生量が多いと予想される場合は、基肥窒素量を慣行栽培の2倍程度とします(図10-3)。施用量が多くなる主な理由は雑草による養分収奪を考慮するためですが、有機質肥料は一作期間中に表示窒素含量の7割程度しか無機化 (有効化) しないため、有機質肥料の無機化率も考慮する必要があるためです。基肥に使用する有機質肥料としては、実績のある市販の有機質肥料か少なくとも窒素4%以上の発酵鶏糞を推奨します。米ぬかなどの生資材 (未発酵・未分解) を養分供給目的で使用することは難易度が高いため、ここでは推奨しません。穂肥は水稲と雑草の生育状況を加味して窒素2~4 kg/10 a (慣行栽培の1.2~2倍) を出穂前20~25日に散布します。

2)除草作業スケジュール

 5月下旬から6月上旬の成苗移植後2~4日目 (植代から1週間以内) にチェーン除草機を植条に沿って人力牽引します。その後も5~7日間隔 (新たに発芽してくる雑草が活着する前に) で最高分げつ期頃まで4~5回作業すると出穂期の雑草残存本数と乾物重が半減し、病虫害などがなければ慣行栽培の90%以上の収量を期待できます(p.25参照)。 諸都合により基肥窒素量が上記基準量よりも少ない条件では、養分欠乏による水稲の生育不良を回避するために雑草残草量を大幅に低減する必要があります。チェーン除草のみでさらに雑草残草量を低減させるためには除草回数の増加が不可欠です。例えば各回の除草作業を片道作業ではなく往復作業にすると効果的に残草量を低減できます (検討中)。
 作業時間の目安は1回30~40分/10 aですので、一作あたり5回の除草とすると合計作業時間は3時間程度になります。また、幼穂形成期以降はヒエなどの稲よりも背丈の高い雑草を手取りするために2時間/10 a程度を見込むことが望ましいでしょう。

3)経費見込み

 有機栽培米の生産費を慣行栽培の3割増しまでに収めることが目標です。チェーン除草機の初期投資は2万円程度なので、耐用年数と栽培面積によって異なるものの減価償却費は1000円/10 a程度です。また除草作業時間の総計を5時間/10 a、時間労賃を1000円、とすると除草経費は6000円/10 a程度と見積もることができます。これは化学合成除草剤を使用した時とほぼ同等と見なせます。一方、成苗育苗では育苗枚数が約2倍となることから原材料費も約2倍と見込まれますが、パイプハウスを必要としないためある程度経費は相殺されるはずです。また、有機質肥料経費は、発酵鶏糞を使用する場合は化学肥料よりも安価な場合が多く、高級な有機肥料を使用する場合は化学肥料の1.5倍程度と見込まれます。目標収量は慣行栽培の9割程度を想定していることを加味すると、生産費は慣行栽培の3割り増し程度と想定されます。

<引用文献>
1) 新潟県農業総合研究所 2013. 苗箱を用いたコシヒカリ有機成苗育苗における肥培管理技術.平成25年度新潟県成果情報、http://www.ari.pref.niigata.jp/ (Web文書、準備中)
2) 新潟県農業総合研究所 2013. 雑草共存環境におけるコシヒカリ有機栽培に必要な基肥窒素施肥量.平成25年度新潟県成果情報、http://www.ari.pref.niigata.jp/ (Web文書、準備中)\\ 

11.水田用小型除草ロボット(アイガモロボット)

8-O 水田用小型除草ロボットは,現在開発中です。8-O

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