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高精度水田用除草機は、乗用型多目的田植機の機体後部にPTOを介して接続可能な除草装置です。移植時と除草時をあわせて3回程度機械の車輪が同じ位置を走行するので、地耐力が高い圃場で使用することが前提となります。除草作業を効率的に行い、機械の旋回部分を少なくするために、10アール以上で長方形の圃場を選択することを推奨します。その他の導入条件については基本技術編を参照してください。
基本技術編>5.雑草の抑制技術>(2)機械除草技術>1)高精度水田用除草機を参照
なお、本編では、主に株式会社クボタの6条用乗用型多目的田植機および高精度水田用除草機を用いて操作事例を紹介しています。他社の機械を使用する際には、操作部の形状やレバー等の位置などが異なっている場合がありますのでご注意ください。また、多目的田植機を慣行栽培と共用する場合は、必ず機械を十分に洗浄した後に有機栽培圃場で使用してください。
米ぬかや菜種油粕などの有機物を移植と同時に散布することで、除草効果が向上する場合が多くみられます。米ぬかや菜種油粕は土壌表面に散布する必要があることから、機械を改良する必要があります (改良は簡易なものですが、メーカーの保証が受けられなくなる場合があるので注意してください)。圃場面積が小さい場合は、畦畔から米ぬかや菜種油粕を散布する方法もあります。
米ぬかや菜種油粕は粒状に加工されたものを使用します (図9-4)。粒状の米ぬかは、無洗米施設から出る副産物で、商品名「米の精」や「粒状米ぬか」としてJAなどで販売されています。
①多目的田植機の移植機部分をとりはずし、高精度水田用除草機を取り付けます。
②後輪のタイヤを除草用のゴムタイヤに交換します (図9-8)。暗渠上を走行する等で車体が傾く可能性が懸念される場合は、補助車輪の使用をお勧めします (図9-9)。
③除草時の圃場の水深は3~5 cm程度にします。
④株間調節レバーを最も小さい目盛りにあわせます (図9-10)。
⑤移植時と同じ場所を走行できる位置に機械をあわせて、操作レバーにより除草機を降ろします。作業速度は0.3~0.5 m/s 程度 (通常の移植作業の1/2~1/3のスピード) にします。
⑥作業の深さは後方のレバーにより調整します (図9-11)。スタート時は短い距離を走行して、条間が確実に除草されているかを確認してください。2回目の除草作業では1回目の除草作業より1段階深さを下げる (深くする) と効果的です。深くしすぎると、除草機についているカバーで土を押しだして欠株が増加するので注意してください。
⑦枕地に移植している場合は、急旋回や切り返しは極力避けてください。
⑧除草作業後は速やかに深水に戻します。
①施肥ホッパー下部にある肥料排出部分にホースを接続し (図9-12)、除草機の後方まで延ばします。ホースは田植機メーカーやホームセンターなどから購入可能です。
②米ぬか等が水稲の株間に落ちるようホースの位置を調整し、タイラップやヒモなどで固定します (図9-13)。
③ホースやヒモが機械本体のTPOや除草機の回転部分に絡まないかなど、安全に作業ができるかを確認します。
④肥料ホッパーからの繰り出し量を50~60kgに調整し、施肥スイッチ (切り替え機) をONにします。ターン時などに米ぬか等が目詰まりしていないか確認します。
高精度水田用除草機に回転ブラシ (図9-14) またはチェーン (図9-15) を装着することで、株間の除草効果を高めることが可能です1)2)。ただし、回転ブラシやチェーンの装着は、除草機の保証対象外になる可能性がありますので、メーカーや販売店に確認するとともに、作業の安全に十分注意してください。
①機械除草では浅耕が基本ですが、高精度水田用除草機にチェーンを装着する場合、耕深は10 cm程度を確保します。これは、前年の稲株などの分解が不十分な場合、耕深が浅すぎると表層にたまった稲株等がチェーンに引っかかり、欠株発生の原因になるためです。
②移植後に除草目的で米ぬか等の有機物を散布した場合は、チェーンを装着して除草を行うと、水稲の生育が停滞したり枯死することがあるので、装着しないでください。
<引用文献>
1)月森弘 2013. 水稲有機栽培のための新しい株間除草方式の開発とその効果. 農研機構技術研究会資料「有機栽培技術研究の現状と課題」:33-37
2)安達康弘 2010. 水田用除草機を利用した除草法の改良とその効果. 中国・四国雑草研究会会報第4号:5-9
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