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この章では有機栽培で利用される雑草の抑制技術を、(1)耕種的抑草技術と(2)機械除草技術にわけて特徴と利用方法を説明します。各技術の特徴を知った上で、現地の状況にあわせて各技術をうまく組み合わせ、効率的な雑草防除を行ってください。
クログワイやオモダカなどの多年生水田雑草に対しては、上記のいずれの耕種的抑草技術もあまり高い効果を示しません。クログワイやオモダカがある場合は、水稲刈り取り後の出来るだけ早い時期に耕起を行うことで、土中の塊茎量を減らすことができます。クログワイの塊茎は乾燥で死滅するため、暗渠などによる乾田化や、耕起によって土中の塊茎を表面に出して乾燥させることが塊茎の死滅に有効となります。オモダカは塊茎の寿命が1~2年と短いため、大豆などとの輪作の効果も期待できます。塊茎から出芽する多年生雑草については、耕種的抑草技術の中に除草剤並の高い防除効果をもつものが有りませんので、その防除には作期中にこまめに手取りに入るなどの作業が重要となります。
(a)高精度水田用除草機の概要
高精度水田用除草機は、乗用型多目的田植機の機体後部にPTOを介して接続可能な除草装置です(図5-6)。本装置には、高速回転する横軸回転ロータで水稲の条間を除草し、水平左右に揺動するレーキで株間を除草する方式の除草機構(図5-7)が採用されています。現在、乗用型多目的田植機および除草装置は、6条用と8条用が井関農機株式会社、株式会社クボタ、ヤンマー株式会社の3社より販売されています。除草時の作業速度は0.3~0.5 m/s(移植時のスピードの1/2~1/3)が標準的です。10アール当たりの作業時間は6条用が約30分、8条用が約20分で、省力的に除草作業ができることが特徴です。
(b)高精度水田用除草機の導入条件
高精度水田用除草機は多目的田植機とセットで購入する必要があり、経営面から有機栽培面積がおおむね3 ha以上規模の農家への導入が推奨されます。特に、以下のような条件の圃場を選択してください。
(c)除草作業
(d)除草効果と水稲の収量
(e)問題点・注意事項
(a)チェーン除草機の特徴と用途
(b)チェーン除草機の性能
チェーン除草機の除草能力に過剰な期待はできませんが、多くの場合雑草残草量は半減します (図5-18)。また、移植後の早い時期の除草回数を増やすことによって除草効果を高めることができます。ただし、化学合成除草剤のように雑草根絶を目指す技術ではなくあくまでも雑草低減技術であるため、成苗移植技術や雑草共存環境を前提とした施肥管理技術と組み合わせることが重要です。
アイガモロボットは、水田内の稲列をまたぎクローラで走行して、雑草の発生を抑制するロボットです。内蔵のカメラで稲列を検知して、稲を踏まないように条間を自動走行します。
***** 水田用除草ロボットは現在開発中です *****
これまで紹介した高精度水田用除草機、チェーン除草機、アイガモロボット以外の除草機械の概要、特徴等を紹介します。
(a)乗用型水田用除草機
除草装置を乗用型の車両に取付けて除草作業を行う水田用除草機が、数社から市販されています。乗用型のため比較的経営規模が大きい生産者の有機栽培に適します。主な特徴および注意点は下記の通りです。
(b)歩行型水田用 (中耕) 除草機
多くの企業から様々な歩行型水田用除草機が市販されています。歩行型水田用除草機には、主に除草装置を小型エンジンの動力で駆動して除草作業を行うものと、人力で水田内を押して歩くことにより、除草用のロータを回転させて除草作業を行うものがあります。どちらも作業者が水田を歩行する必要がありますので、大規模な有機栽培には適していません。主な特徴および注意点は下記の通りです。
<引用文献>
1)吉田隆延・水上智道・宮原佳彦・牧野英二・臼井善彦・関口孝司・三浦重典 2010. 乗用型水田除草機と米ぬか散布を組み合わせた水田用複合除草技術の実証試験. 平成21年度生研センター研究報告会:23-31
2)宮原佳彦 2005. 乗用型高精度水田用除草機の開発と実用化. 関東雑草研究会報告16: 11-17
3)月森弘 2013. 水稲有機栽培のための新しい株間除草方式の開発とその効果. 農研機構技術研究会資料「有機栽培技術研究の現状と課題」:33-37
4)安達康弘 2010. 水田用除草機を利用した除草法の改良とその効果. 中国・四国雑草研究会会報第4号:5-9
5)古川勇一郎 2011. 「チェーン除草」農業総覧・病害虫防除・資材編. 第9巻追録第17号
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