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rsv:epidemiology

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イネ縞葉枯病の疫学研究まとめ(ver.1 2012.3.13)

  1. イネ縞葉枯ウイルス(RSV)は、ヒメトビウンカやその他いくつかのウンカ類によって永続的に伝搬される1)。ウイルスは虫体内で増殖し、メス成虫から子へ経卵伝搬する
  2. ヒメトビウンカへのウイルス感染の影響はよく分かっていない。Nasu2)は、繁殖率の低下、幼虫死亡率の上昇、生存期間の短縮を報告しているが、Kishimoto3)はそのような阻害的な影響は無いことを報告している。
  3. RSVの経卵伝染率は個体群によって異なるが、90%程度とする報告が多い4)。高い場合で96%、低い場合で71%、19%という報告がある5)
  4. 媒介能力は虫によって異なる6)。媒介能力の高い(または低い)個体群を選択飼育することが可能である。
  5. RSVは一部の実験植物に機械的に接種できる7)。ただし、イネへ機械的接種は困難であり、報告例はない。
  6. RSVは、自然界ではイネ、コムギ、オオムギ、エンバク、アワ、幾つかのイネ科雑草に感染するが、イネと寒地型イネ科雑草以外の植物はRSVの宿主として適さず、翌年のウイルス病のソースにはならない8)
  7. 主に4齢幼虫が休眠幼虫となり畦畔などの雑草中で越冬する9)。3齢や2齢で越冬することもあり、寒冷地ほどその割合が高い。低温(20℃以下)、短日(8-10時間照明)で幼虫期から飼育すれば休眠に入る10)
  8. 9月から10月にかけてのイネ収穫にともない、ヒメトビウンカはイネからイネ科雑草、イネ科雑草からムギ・オオムギと移動し、ウイルス伝搬と産卵を行う。9月下旬から10月にかけて孵化した幼虫は、休眠幼虫としてムギ、オオムギ、イネ科雑草で越冬する。3月に越冬幼虫が羽化し、その一部は早期栽培イネに移動する。
  9. 5月終わりから6月中旬にかけて第1世代成虫(その大部分が長翅)が水田に移動し、ウイルスを媒介する。イネへのウイルスの主要な感染は、第1世代成虫と第2世代幼虫によってもたらされる。一般に、ウイルス病発生量は4月上旬に移植されたイネで少なく、5月移植したイネで高くなり、それ以降で再び低くなる。幼苗期に感染したイネは、重度の症状を示し、早期に枯死する。生育後期であれば、保毒ヒメトビウンカに加害されたとしても、症状は軽く枯死しない。11)12)13)14)15)
  10. 北海道では、ウイルス感染した越冬世代成虫が5月から6月に発生し、近くのイネ幼苗に移動し、ウイルスを感染させる。16)
  11. 日本では、翌シーズンの縞葉枯病発生量は、越冬個体群における虫の感染率と密度から推測できる。17)
  12. 縞葉枯病は中国、日本、韓国、シベリア、台湾で発生する。18)
  13. 日本では、1960-1972年で多発し、1977-1986年で再度多発した。19)
  14. 韓国では、1964-1965年、1973-1974年に多発した。20)
  15. 中国では、1964年に上海、Jiangso、Zhejiangで多発、1975-1976年に北京で、1984年にShandongで、そして1974-1990年にYunnanで繰り返された。21)
  16. 日本における1960年代の被害拡大は、1. 早生品種の栽培面積の増加(虫とウイルスの増殖にとって好適な条件となる)2. 冬の間のウンカ類の生息地となるムギとオオムギの栽培面積拡大、3. ウイルスに感受性の高い幼苗を継続的に供給し続ける栽培体系による。22)23)
  17. 1973年以降の発生量の減少は、1960年頃から続いた冬作ムギとオオムギの減少による。1970年代後半にはムギ類の栽培面積が少し広がり、1977年にヒメトビウンカの発生量が関東地方で増加し、2回目の異常発生が始まった。24)
  18. 縞葉枯病が多発した地域では、1981年に抵抗性品種が導入され、そのような品種の増加にともない、1988年には低い水準になった。25)26)27)
  19. その後、縞葉枯病の異常発生は西日本と関東地方で局所的に起こった。28)
2)
Nasu, S. (1965) J Appl Entomol Zool 9:225-237.
3)
Kishimoto, R. and Yamada, Y. (1986) Plant Virus Epidemics, pp 327-344.
4)
河野 (1966) 植物防疫20:131-136.
5)
岸本(1979)植物防疫33:209-213.
6)
Kishimoto R (1967) Virology 32:144-152.
7) , 18) , 21) , 23) , 24) , 25)
Hibino, H. (1996) Annu Rev Phytopathol 34:249-274.
8)
Toriyama, S. (1983) Plant Viruses No.269
9)
Kishimoto (1966) 植物防疫20:22-26.
10)
Kishimoto (1958) 応動昆2:128.
11)
Chong et al. (1975) Korean J Entomol 5:21-31.
12)
Chung BJ (1974) Korean J Plant Prot 13:181-204.
13)
Okamoto et al. (1967) Chugoku Agric Exp Stn E 1:89-114.
14)
Uehara H and Tsuzaki Y (1975) Bull Kagawa Agric Exp Stn 26:29-71.
15)
Yasuo et al. (1965) J Cent Agric Exp Stn 8:17-108.
16)
Kajino, Y. (1992) Rep Hokkaido Prefectural Agric Exp Stn No77: 63.
17)
Kishomoto and Yamada (1986) Plant Virus Epidemics, pp. 327–44.
19) , 22)
Kiritani (1983) PlantVirus Epidemiology, pp 239-247.
20)
Chong et al (1975) Korean J Entomol 5: 21-31.
26)
Noda et al. (1991) Ann Phytopathol Soc Jpn 57:259-262.
27)
Takayama T (1988) Proc Kanto-Tosan Plant Prot Soc 35:1-7.
28)
Hibino H (1996) Annu Rev Phytopathol 34:249-274.
rsv/epidemiology.1398928802.txt.gz · 最終更新: 2014/05/01 (Thu) 16:20 by mokuda