日本における通常の栽培条件では、イネのみ感染が確認されている。中国では、コムギにも感染することが報告されている1)。人為的な接種試験では、イネ以外にコムギ、オオムギ、トウモロコシ、ライムギ、エンバクなどに感染する。牧草では、イタリアンライグラスとペレニアルライグラスに感染する。作物以外では、セトガヤ,カラスムギ,コバンソウ,ナギナタガヤ,スズメノカタビラなどのイネ科雑草にも感染する。
気温、移植時期によるが、概ねヒメトビウンカによる吸汁の1〜3週間後に病徴が見られる。生育が進むと発病までの期間が長くなる。1葉期に接種した場合、6〜7日後、2〜3葉期では10日後、5、7葉期では17〜19日後、9葉期では19〜21日後に病徴が見られたとの報告がある2)。別の報告では、7葉期に接種したイネでは7日〜10日、9葉期に接種したイネでは約21日で病徴が見られた3)。幼穂形成期以後の感染は、病徴が明確に現れない。ただし、幼穂形成期以後に感染した株でも、収穫後のひこばえには病徴が見られる場合が多い。
イネ縞葉枯ウイルスは主にヒメトビウンカ(Laodelphax striatellus)により媒介されるが、サッポロトビウンカ(Unkanodes sapporona)、シロオビウンカ(Unkanodes albifascia)及びセスジウンカ(Terthron albovittatum)もウイルスを媒介する。本ウイルスは、管理作業による接触伝搬はしない。また、土壌、種子伝染はしない。
最短では、1頭の保毒雄成虫による3分の吸汁でウイルスが媒介されるとの報告がある4)。保毒ヒメトビウンカの寄生数が多いほど、吸汁時間が長いほど伝搬率が上昇する。
人為的にイネ縞葉枯ウイルスをヒメトビウンカに接種した試験の結果から、ヒメトビウンカ体内でウイルスが増殖することが明らかになっている5)。
幼虫のみでなく、成虫もウイルスを獲得6)する。成虫の方が幼虫より獲得率が高く、若齢幼虫より終齢幼虫の方が、獲得率が高いとの報告がある7)。なお、ヒメトビウンカは最短15分の吸汁によりウイルスを獲得する。ただし、吸汁した全ての個体がウイルスを媒介する能力を持つわけではない。24時間の吸汁でウイルス媒介個体はほぼ最大となり、約20%がウイルスを媒介する能力を獲得する8)。
ヒメトビウンカの保毒率11)は地域によって大きく異なり、年によっても変動する。一般に、イネ縞葉枯病発生地域では高く、発病が継続するに従い、徐々に上昇する。また、抵抗性品種を栽培した水田では保毒虫率が低下することが報告されている12)13)14)。
雌成虫のほうが雄成虫より媒介率が高いとの報告がある15)。経卵伝搬した場合、幼虫は孵化直後からウイルスを伝搬するが、幼齢による媒介率の差はほとんどない。
現在、日本で栽培されている「あさひの夢」などの抵抗品種は「Modan」というインディカ型品種由来のstv-bi遺伝子を保有しており、これら品種は人為的接種で感染圧が高い条件下ではウイルスに感染し、発病する。発病したイネはウイルス獲得源になる野田 聡・大村 敏博・村上 正雄・土崎 常男(1991) 日本植物病理学会報 57: 259-262.。しかし、自然の栽培条件下では減収となるほど発病することはない。