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1 土中に潜り込んでいた貝を耕耘して冬季に寒風にさらすことで駆除する方法が推奨されているが、西日本の太平洋側などの温暖な地域では、冬季に耕耘しても低温による殺害効果は期待できないのではないでしょうか
スクミリンゴガイは-6~-7℃で凍結して死亡しますが、凍結しなくとも10℃以下 の気温であれば徐々に寒さによるダメージを蓄積していきます。気温が低ければ低いほどダメージの蓄積量も大きくなります。本種の低温耐性については0℃で 20~25 日、-3℃で3日、-6℃で24時間以内に死亡するとの報告等1)がありますが、このような極端な低温が続かないような場合でも数カ月にわたる10℃以下の気温によって冬の間に 多くの貝が死亡します。これまでの研究で、平年並みの気温であれば、一般的な水田での本種の越冬率は九州で5~10%、奈良県で1%。茨城県では0%(水田では越冬できない)と言われていますが、近年暖冬が増えたことで各地で越冬する 個体の割合が増えているようです。防除マニュアル等で推奨されているように、厳寒期(前)の耕耘によって土中にいる貝を掘り起こして寒風にさらすことで、防除効果を高めることができます。
2 越冬して翌年に被害を発生させる個体はいつ頃生まれるのでしょうか
8月頃に孵化した個体は、その年のうちに越冬に適した大きさまで成長し越冬しやすくなります。一方、それより前や後に孵化した個体は大きくなりすぎたり、小さすぎたりして越冬成功率は低くなります。8月頃に卵塊がたくさん産み付けられるような場合は、一つ一つ落とすのは大変なので、秋季や春季に石灰窒素を使用するなどして一斉に防除すると効率的です。
3 スクミリンゴガイをトラップで捕獲するための誘引剤は何が良いですか
貝は糖類を特に好むことがわかっています。野菜に引き寄せされるのは糖類のためです。本マニュアルの捕殺の項で紹介しているMix餌(米ぬか:米麹:鯉のエサを当量ずつ混合)は、とても誘引力が高く、かつ、発酵の効果により腐敗しにくい(長持ちする)特徴がありますので、ぜひお試しください。
4 初発地において、生息数を減らすための対策の優先順位を教えてください。田畑輪換はどうでしょうか
初発地においては、まずは貝の定着を阻止すること、次いで周辺地域への貝の拡散を防止することが重要となります。 発生が特定の水田や水路の一部など、極めて限られた地点に限定されている状況の場合は、田畑輪換のほか、貝・卵塊の除去、水路の場合は泥上げが有効です。 貝が定着している(根絶が困難な)場合は、水稲への被害を防ぐことを目的とした防除を実施してください。 本マニュアルにあるように、一般的には農薬散布や冬期の耕うん、浅水管理などが効果的な防除対策ですが、地域として取り組めるのであれば、田畑輪換も有効です。田畑輪換は、地域全体で実施するのは難しい場合が多い技術ですが、貝の生息数を減らす効果は大きい方法ですので、可能であれば積極的に実施ください。
5 移植後3週間を過ぎれば被害は出なくなるのでしょうか。また、中干し後に水田内にいる個体は被害を出さないのでしょうか
移植後3週間を過ぎれば株ごと食害されることはありませんが、分げつ初期の葉を食害され、茎数が増えなくなることがあります。また、中干し後には食害は起きませんが、個体数が多いと越冬数が増え、翌年の被害につながります。本田期の捕殺、冬期の耕うんなどを行って貝の密度を減らし、翌年の被害がでにくいようにしてください。
6 スクミリンゴガイの成長スピードはどのくらいですか。8月に田んぼで生まれている個体はその後どうなるのですか
早い時期(5~6月)に生まれた個体は8~9月に2cm以上になることもありますが、遅い時期(8~9月)に生まれた個体は1cm程度で冬を迎えます。当年産まれた個体が当年の稲作に被害を及ぼすことはありませんが、越冬して翌年に被害を発生させます。
7 スクミリンゴガイには寄生虫がいて、健康への被害があると聞いたことがあります
健康に有害な寄生虫の宿主となりうるため、貝を触った後は手をよく洗うことはもちろん、貝の除去作業等においてはゴム手袋等を着用するようにしてください。
8 侵入経路はどのようなものがあるでしょうか
生息地から水系を通って広がっていくものと考えられます。まれに飛び地状に発生する場合がありますが、農作業用機械に付着した土や泥にスクミリンゴガイが混ざり、移動した可能性が高いと考えられます。
9 水田への侵入は取水口が主と考えてよいですか。また、自力で畦畔を越えて侵入することはありますか
主な侵入場所は取水口と考えられますが、段差が低ければ、排水口からも侵入できます。畦畔を越えて侵入する様子も観察されています。
10 トラップに使う餌は何が良いですか
米ぬか、野菜などが手軽です。近年開発された餌として、米ぬか、米こうじ、市販のコイのエサを同じ重量比で混ぜたものがあります。誘引効果も高く、効果の継続時間も長いことが明らかになっています。
11 メタアルデヒド粒剤やリン酸第二鉄粒剤を施用した後、特別な水管理は必要ですか
いずれも、食べさせることで効果がある剤です。薬剤施用後は湛水条件にし、スクミリンゴガイに餌を食べさせることが重要です。
12 農薬の散布時期はいつが良いですか
貝の活動が活発になる17℃以上の水温のときに散布します。5月上旬以降に移植した水田であれば、移植後すぐに散布します。引き続き個体数が多い場合は、移植4週間後(分げつ初期)にも散布するとよいです。
13 転作によって発生量を減らすことはできますか
発生量を大幅に減少させることができますが、湿った土の中であれば1年間以上生きることができるため、根絶はできません。また、稲作再開後は、周辺の水田や水路からの侵入に注意してください。
14 卵塊を水中に落として殺卵する場合、注意することは何ですか
産み付けられてから間もない濃いピンク色の卵は水中に落とすと孵化できません。水路の壁などから水中に削り落とすだけで効果があります。時間が経って黒~白っぽくなっている卵はふ化直前なので、水中に落としてもふ化してしまいます。押ししつぶす必要があります。
15 用水の泥上げは4月に行うことが多い地域です。4月では貝の防除効果はないでしょうか
泥上げによる防除を行う場合、陸に上げた後に寒さにさらすことで効果が高くなりますが、気温が高いと寒さで死ぬ効果は期待できません。春に実施する場合は、泥を広げ、念入りに踏みつぶしたり、焼却または埋却するとよいです。
16 厳冬期前(12月)の耕耘が対策として挙げられていますが、メタン発生を抑制する早期の秋起こしと時期が異なります。どのように整理すればよいですか
メタン発生抑制以外にも、ヒメトビウンカの防除などの観点から、秋耕の実施を呼び掛ける場合がありますが、スクミリンゴガイ防除を優先する場合には、なるべく遅い時期に耕耘するほうがよいです。
17 石灰窒素を春施用したとき、どの程度減肥すればよいですか
石灰窒素20~30kg/10aあたり窒素4~6kg/10a程度で計算し、減肥してください。
18 冬期耕耘による防除は、速度はどの程度遅くすればよいですか。あまり遅いと、時間・燃料コストの面から実施が難しいです
可能な範囲で慣行より遅く実施してください。加えて、防除効果を高めるため、回転数を高く(PTO:2速)して実施してください。
