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kikai-sousa:chain

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kikai-sousa:chain [2015/03/09 (Mon) 12:03]
juten [(1)チェーン除草作業のコツと注意点]
kikai-sousa:chain [2015/03/12 (Thu) 11:24] (現在)
juten [(2)チェーン除草機で慣行栽培の90%以上の収量を目標とする栽培体系]
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 === 1)成苗育苗技術 === === 1)成苗育苗技術 ===
  成苗移植技術の狙いは雑草との競争力向上にあります。代かき後に発芽してくる雑草と対峙する移植苗は身形が大きいほど有利といえます。例え話しですが、隣町のガキ大将とケンカするならば低学年の子よりも高学年の子の方が圧倒的に有利、そんな感覚です。つまり雑草との競争力という点においては、稚苗よりも中苗、中苗よりも成苗、可能であれば成苗よりもポット苗に利があるといえます。チェーン除草のためには成苗あるいはポット苗でなければならない、というわけではありませんが、できるだけ大きな苗が有利であり、雑草対策は容易になる、といえるでしょう。\\  成苗移植技術の狙いは雑草との競争力向上にあります。代かき後に発芽してくる雑草と対峙する移植苗は身形が大きいほど有利といえます。例え話しですが、隣町のガキ大将とケンカするならば低学年の子よりも高学年の子の方が圧倒的に有利、そんな感覚です。つまり雑草との競争力という点においては、稚苗よりも中苗、中苗よりも成苗、可能であれば成苗よりもポット苗に利があるといえます。チェーン除草のためには成苗あるいはポット苗でなければならない、というわけではありませんが、できるだけ大きな苗が有利であり、雑草対策は容易になる、といえるでしょう。\\
- 従って、手持ちの播種機と育苗箱で育苗することを前提とすれば、葉齢4.5以上(不完全葉を除く)・草丈18 cm程度の成苗育苗を心がけることを推奨します。:?:[[kihon:5|基本技術編>3.育苗]]>(3)育苗ポットによる成苗育苗法、または成苗育苗に関する成果情報<sup>1)</sup>を参照してください。+ 従って、手持ちの播種機と育苗箱で育苗することを前提とすれば、葉齢4.5以上(不完全葉を除く)・草丈18 cm程度の成苗育苗を心がけることを推奨します。:?:[[kihon:3|基本技術編>3.育苗]]>(3)育苗ポットによる成苗育苗法、または成苗育苗に関する成果情報<sup>1)</sup>を参照してください。
  
 === 2)施肥調整技術 === === 2)施肥調整技術 ===
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 === 3)浮稲発生の可能性の確認 === === 3)浮稲発生の可能性の確認 ===
 {{ :図10-4.jpg?180|}} {{ :図10-4.jpg?180|}}
- チェーン除草は、移植した苗の上から作業を行うため(p.24参照)、移植した苗の活着状況が悪いと浮苗を発生させて欠株となります。例えば移植3~6日後の稲株引抜強度と同日行ったチェーン除草による浮苗発生率の調査によると(図10-4)、最低引抜き強度が30gf以下では浮苗が発生しています(表10-5)。現場の判断法としては、稲株を手で引き抜いた時の抵抗感が、単2乾電池(約50g)をひもで吊した時の抵抗感と同等以下であれば浮苗の懸念があり、単1乾電池(約100g)をひもで吊した時の抵抗感と同等以上であれば浮苗の心配はないと推定できます。\\+ チェーン除草は、移植した苗の上から作業を行うため、移植した苗の活着状況が悪いと浮苗を発生させて欠株となります。例えば移植3~6日後の稲株引抜強度と同日行ったチェーン除草による浮苗発生率の調査によると(図10-4)、最低引抜き強度が30gf以下では浮苗が発生しています(表10-5)。現場の判断法としては、稲株を手で引き抜いた時の抵抗感が、単2乾電池(約50g)をひもで吊した時の抵抗感と同等以下であれば浮苗の懸念があり、単1乾電池(約100g)をひもで吊した時の抵抗感と同等以上であれば浮苗の心配はないと推定できます。\\
  浮苗発生が懸念される場合は、チェーン除草の開始を数日先送りすべきですが、その間にも雑草の発芽と生育が進むことを考慮して実施日を決める必要があります。また、一部の黒ボク土壌のように土壌の特性として稲株の引抜き抵抗が高くなりにくい条件では、より軽量なチェーン除草機を導入すべきと考えられます。  浮苗発生が懸念される場合は、チェーン除草の開始を数日先送りすべきですが、その間にも雑草の発芽と生育が進むことを考慮して実施日を決める必要があります。また、一部の黒ボク土壌のように土壌の特性として稲株の引抜き抵抗が高くなりにくい条件では、より軽量なチェーン除草機を導入すべきと考えられます。
  
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 ====(2)チェーン除草機で慣行栽培の90%以上の収量を目標とする栽培体系 ==== ====(2)チェーン除草機で慣行栽培の90%以上の収量を目標とする栽培体系 ====
 === 1)基肥施用量 === === 1)基肥施用量 ===
- 有機栽培に転換後1~2年程度の水田でまだ雑草発生量が多くないと予想される場合は、基肥窒素量を慣行栽培+1 kg程度とします。一方、雑草発生量が多いと予想される場合は、基肥窒素量を慣行栽培の2倍程度とします(図10-3)。施用量が多くなる主な理由は雑草による養分収奪を考慮するためですが、有機質肥料は一作期間中に表示窒素含量の7割程度しか無機化 (有効化しないため、有機質肥料の無機化率も考慮する必要があるためです。基肥に使用する有機質肥料としては、実績のある市販の有機質肥料か少なくとも窒素4%以上の発酵鶏糞を推奨します。米ぬかなどの生資材 (未発酵・未分解を養分供給目的で使用することは難易度が高いため、ここでは推奨しません。穂肥は水稲と雑草の生育状況を加味して窒素2~4 kg/10 a (慣行栽培の1.2~2倍を出穂前20~25日に散布します。+ 有機栽培に転換後1~2年程度の水田でまだ雑草発生量が多くないと予想される場合は、基肥窒素量を慣行栽培+1 kg程度とします。一方、雑草発生量が多いと予想される場合は、基肥窒素量を慣行栽培の2倍程度とします図10-3。施用量が多くなる主な理由は雑草による養分収奪を考慮するためですが、有機質肥料は一作期間中に表示窒素含量の7割程度しか無機化有効化しないため、有機質肥料の無機化率も考慮する必要があるためです。基肥に使用する有機質肥料としては、実績のある市販の有機質肥料か少なくとも窒素4%以上の発酵鶏糞を推奨します。米ぬかなどの生資材未発酵・未分解を養分供給目的で使用することは難易度が高いため、ここでは推奨しません。穂肥は水稲と雑草の生育状況を加味して窒素2~4 kg/10 a慣行栽培の1.2~2倍を出穂前20~25日に散布します。
  
 === 2)除草作業スケジュール === === 2)除草作業スケジュール ===
- 5月下旬から6月上旬の成苗移植後2~4日目 (植代から1週間以内にチェーン除草機を植条に沿って人力牽引します。その後も5~7日間隔 (新たに発芽してくる雑草が活着する前にで最高分げつ期頃まで4~5回作業すると出穂期の雑草残存本数と乾物重が半減し、病虫害などがなければ慣行栽培の90%以上の収量期待できます(p.25参照) + 5月下旬から6月上旬の成苗移植後2~4日目植代から1週間以内にチェーン除草機を植条に沿って人力牽引します。その後も5~7日間隔 新たに発芽してくる雑草が活着する前にで最高分げつ期頃まで4~5回作業すると出穂期の雑草残存本数と乾物重が半減し、病虫害などがなければ慣行栽培の90%以上の収量期待できます。諸都合により基肥窒素量が上記基準量よりも少ない条件では、養分欠乏による水稲の生育不良を回避するために雑草残草量を大幅に低減する必要があります。チェーン除草のみでさらに雑草残草量を低減させるためには除草回数の増加が不可欠です。例えば各回の除草作業を片道作業ではなく往復作業にすると効果的に残草量を低減できます検討中。\\
-諸都合により基肥窒素量が上記基準量よりも少ない条件では、養分欠乏による水稲の生育不良を回避するために雑草残草量を大幅に低減する必要があります。チェーン除草のみでさらに雑草残草量を低減させるためには除草回数の増加が不可欠です。例えば各回の除草作業を片道作業ではなく往復作業にすると効果的に残草量を低減できます (検討中)。\\+
  作業時間の目安は1回30~40分/10 aですので、一作あたり5回の除草とすると合計作業時間は3時間程度になります。また、幼穂形成期以降はヒエなどの稲よりも背丈の高い雑草を手取りするために2時間/10 a程度を見込むことが望ましいでしょう。  作業時間の目安は1回30~40分/10 aですので、一作あたり5回の除草とすると合計作業時間は3時間程度になります。また、幼穂形成期以降はヒエなどの稲よりも背丈の高い雑草を手取りするために2時間/10 a程度を見込むことが望ましいでしょう。
  
 === 3)経費見込み === === 3)経費見込み ===
- 消費者の購買意欲に関するアンケート結果などから推察すると、有機栽培米の生産費を慣行栽培の3割増しまでに収めることが一つの目標となります。チェーン除草機の初期投資は2万円程度なので、耐用年数と栽培面積によって異なるものの減価償却費は1000円/10 a程度です。また除草作業時間の総計を5時間/10 a、時間労賃を1500円、とすると除草経費は8500円/10 a程度と見積もることができます。これは化学合成除草剤を使用した場合よりもやや高い程度です。一方、成苗育苗では育苗枚数が約2倍となることから原材料費も約2倍と見込まれますが、パイプハウスを必要としないためある程度経費は相殺されるはずです。また、有機質肥料経費は、発酵鶏糞を使用する場合は化学肥料よりも安価な場合が多く、高級な有機肥料を使用する場合は化学肥料の1.5倍程度と見込まれます。目標収量は慣行栽培の9割程度を想定していることを加味すると、生産費は慣行栽培の3割増し程度と想定されます。\\+ 消費者の購買意欲に関するアンケート結果などから推察すると、有機栽培米の生産費を慣行栽培の3割増しまでに収めることが一つの目標となります。チェーン除草機の初期投資は2万円程度なので、耐用年数と栽培面積によって異なるものの減価償却費は1000円/10 a程度です。また除草作業時間の総計を5時間/10 a、時間労賃を1500円、とすると除草経費は8500円/10 a程度と見積もることができます。これは化学合成除草剤を使用した場合よりもやや高い程度です。一方、成苗育苗では育苗枚数が約2倍となることから原材料費も約2倍と見込まれますが、パイプハウスを必要としないためある程度経費は相殺されるはずです。また、有機質肥料経費は、発酵鶏糞を使用する場合は化学肥料よりも安価な場合が多く、高級な有機肥料を使用する場合は化学肥料の1.5倍程度と見込まれます。目標収量は慣行栽培の9割程度を想定していることを加味すると、玄米60kg当たりの生産費は慣行栽培の3割増し程度と想定されます。\\
  
 {{ :図10-6.jpg?480 |}} {{ :図10-6.jpg?480 |}}
kikai-sousa/chain.1425870185.txt.gz · 最終更新: 2015/03/09 (Mon) 12:03 by juten