====== イネ縞葉枯病について ====== ===== 病原ウイルス ===== イネ縞葉枯病は、イネ縞葉枯ウイルス(//Rice stripe virus((RSVと省略されます))//)という植物のウイルスにより引き起こされる病気です。このウイルスは、幅が8nm((1nmは1ミリメートルの100万分の1です))、長さが500〜2000nmのゴムひものような形状をしていますが、極めて小さいため肉眼はもちろん、通常の顕微鏡でも見えないため、観察には電子顕微鏡が必要です。\\ 分類学的には、[[http://en.wikipedia.org/wiki/Tenuivirus|Tenuivirus]]属に分類されるRNAウイルスです。 {{:rsv:rsv:rsv.jpg?nolink&200|イネ縞葉枯病ウイルスの電子顕微鏡写真}} \\ イネ縞葉枯病ウイルスの電子顕微鏡写真\\ 参考[[http://www.dpvweb.net/dpv/showdpv.php?dpvno=375|イネ縞葉枯病に関する学術的記載(英語のサイト)]] ===== 発生地域 ===== イネ縞葉枯病は、日本、中国、韓国などで発生が報告されています。日本では、関東以西の地域でよく見られます。発生地域に偏りが見られる特徴があります。 参考 [[rsv:caution|イネ縞葉枯病に関する病害虫発生注意報など]] ===== 伝染 ===== RSVは、ヒメトビウンカ(//Laodelphax striatellus//)サッポロトビウンカ(//Unkanodes sapporona//)、シロオビウンカ(//Unkanodes albifascia//)及びセスジウンカ(//Terthron albovittatum//)によって永続的((一度、ウイルスを体内に取り込むと死ぬまで媒介する能力を持つこと))に媒介されます。本ウイルスは経卵伝染((ウイルスを持ったメス成虫が産んだ子供にウイルスが移行すること))します。\\ 種子伝染、接触伝染は起こらないとされています。 {{:rsv:rsv:sbph.jpg?nolink&200|ヒメトビウンカ}} \\ イネ縞葉枯病を媒介するヒメトビウンカ ===== 宿主 ===== 自然での主な宿主はイネ、コムギ、オオムギ及びイネ科雑草です。\\ Chung, B. J.(1974)では、以下の宿主が報告されています。 ^RSVが感染する植物 ^ 和名 ^ | //Avena sativa// | エンバク | | //Cynodon dactylon// | ギョウギシバ | | //Dactylis glomerata// | カモガヤ | | //Digitaria adscendens// | メヒシバ | | //Digitaria violascens// | アキメヒシバ | | //Eragrostis multiflorum// | | //Hordeum vulgare// | オオムギ | | //Lolium perenne// | ホソムギ | | //Oryza sativa// | イネ | | //Oryza sativa// var. //japonica// | イネ | | //Phleum pratense// | オオアワガエリ | | //Secale cereale// | ライムギ | | //Setaria italica// | アワ | | //Setaria viridis// | エノコログサ | | //Triticum aestivum// | コムギ | | //Zea mays// | トウモロコシ | ^ RSVが感染しない植物 ^ 和名 ^備考 | | //Anthoxanthum odoratum//  | ハルガヤ |  | //eragrostis curvula// | シナダレスズメガヤ |  | //Echinochloa crus-galli// | ヒエ | ※Susceptibleの報告あり |  | //Elymus tsukushiensis// var. //transiens// | カモジグサ | ヒメトビ選好性あり |  | //Eleocharis acicularis// | マツバイ | | //Festuca arundinacea// | オニウシノケグサ | | //Phalaris arundinacea// | クサヨシ | | //Poa pratensis// | ケンタッキーブルーグラス | | //Aneilema japonicum// | イボクサ | | //Stellaria uliginosa// | ノミノフスマ | | //Bulbostylis barbata// | ハタガヤ | | //Cyperus flavidus// | アゼガヤツリ | | //Festuca ovina// | ウシノケグサ | ===== RSVの遺伝子 ===== イネ縞葉枯ウイルスは一本鎖RNAウイルスで4分節構造をとっています。 * RNA1は、RNA依存RNA酵素として働く337 kDaのタンパク質をコードしています(RNA1 encodes a putative 337 kDa protein that acts as an RNA-dependent RNA polymerase (RdRp)) * RNA2は、NS2とNSvc2という2つの非構造(ウイルス粒子に含まれない)タンパク質をコードしています(RNA2 encodes NS2 and NSvc2 proteins) * NS2はサイレンシングサプレッサーの機能を持ちます(NS2, a silencing suppressor with other unknown function) * NSvc2はウイルス粒子膜上の糖タンパク質の機能を持ちます(NSvc2, a putative membrane glycoprotein) * RNA3は、NS3とヌクレオカプシドタンパク質をコードします(RNA3 encodes NS3 and nucleocapsid proteins) * NS3の機能は不明です * RNA4はSPとNSvc4をコードします(RNA4 encodes SP and NSvc4 ) * SPは非構造の感染特異的タンパク質です(SP, a nonstructural disease specific protein) * NSvc4は移行タンパク質です(NSvc4,a movement protein)